2017/02/22

学校法人における不正会計 4

 前回は公認会計士による学校法人特有の不正リスクの把握方法について解説しました。そのリスクを「不正な財務報告」と「資産の流用」とに区分し、前者については、理事の業務執行に対する理事会による監督や監事による監査等の適切なガバナンスを構築すること、また後者については、内部統制の不備に基因する場合が多いため当該リスクを防止又は発見する上で有効な内部統制を構築することが重要である点について理解されたかと思います。最終回となる今回は、学校法人における不正会計で頻発する寄付金及び教材料等(預り金)に係る不正とその対応について解説します。
 なお、文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する法人の公式的な見解ではないことを申し添えます。


1 保護者等から収受する寄付金及び教材料等(預り金)の取扱い

 本項「学校法人における不正会計」1回目では、任意団体(周辺会計)において寄付金名目で徴収した資金について多額の使途不明金が発生した事件や生徒から必要以上の「教材費」などを徴収し、余剰金を「隠し口座」に不正にプールしていた事件を紹介しました。これら不正事例に関して文部科学省は、学校法人の教育研究に直接必要な経費に充てられるべき寄付金及び保護者等から徴収している教材料等の取扱いについて、平成27年3月31日付けで26高私参第9号「学校法人における寄付金等及び教材料等の取扱いの適正確保について(通知)」を各都道府県知事に対して発出し、所轄学校法人に対して、引き続き適切な指導がなされるよう求めました。
 当該通知は、一部の学校法人において、教育研究に直接必要な経費に充てるべき寄付金及び保護者等から徴収している教材料等について、不適切な取り扱いが行われている実態が発生したことに伴い、学校法人が保護者等関係者から教育研究に直接必要な経費に充てるために受け入れた寄付金等は、すべて学校法人が直接処理し、学校法人会計の外で経理することなどがないよう改めて求めています。
 また、教材料等の取扱いについても学校法人会計基準の趣旨にのっとって適切に処理されるよう求めるとともに、新学校法人会計基準が平成27年4月1日から適用となることも踏まえ、従来からの慣行にとらわれることなく、会計処理の全般にわたり、必要に応じて点検や改善を行うほか、内部監査機能を強化するなど経理の適正を期すよう求めています。
 文科省は、保護者等関係者からの寄付金等の取扱いについて、平成14年10月1日付けで通知した「私立大学における入学者選抜の公正確保等について」を留意的に掲載し、その趣旨に沿った寄附金収受に関する管理運営を確保する必要があると注意喚起しています。また、管理運営の不適正が認められる場合等には、私立大学等経常費補助金について私立学校振興助成法、私立大学等経常費補助金交付要綱及び取扱要領の規定にのっとり厳正な措置を講ずるものである点留意的に記載しています。当該通知によれば、寄付金の収受と入学者選抜の実施に係る適切な管理運営を行う上で以下事項が遵守される必要があります。なお、特に重要な部分は、「下線」を付して強調しました。

2017/02/15

学校法人における不正会計 3

 前回は、不正の発生を未然に防止するために必要となる学校法人におけるガバナンスについて解説しました。私立学校法上規定されている理事会など各機関の特徴と理事を監査する立場にある監事機能の問題点について理解されたかと思います。今回は、学校法人における不正について公認会計士等がどのような視点で不正リスクの把握とその対応を行っているかについて解説します。
 なお、文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する法人の公式的な見解ではないことを申し添えます。

1 公認会計士等による学校法人特有の不正リスクの把握
 私立学校法は、公認会計士又は監査法人(以下、「公認会計士等」とする。)といった学校法人外部者による監査に関する定めを設けていませんが、私立学校振興助成法では、公認会計士等による学校法人に対する監査の定めがあり、理事や教職員などによる不正の発見について積極的な関与が求められています。すなわち、公認会計士等が監査を行うに当たり行為規範とされている「監査基準」(平成22年3月26日最終改訂 企業会計審議会)において、「監査人は、監査の実施において不正又は誤謬を発見した場合には、経営者等に報告して適切な対応を求めるとともに、適宜、監査手続を追加して十分かつ適切な監査証拠を入手し、当該不正等が財務諸表に与える影響を評価しなければならない。」(第三 実施基準 三 監査の実施6)と定めており、公認会計士等は、不正を識別し、又は不正が存在する可能性があることを示す情報を入手した場合は、これらの事項を速やかに理事や監事へ報告することが求められています。

2017/02/08

学校法人における不正会計 2

 前回は、学校法人における不正会計の事例、対応策について解説しました。今回は学校法人におけるガバナンスについて解説します。学校法人における不正を考える場合に、そのガバナンス(統治)について理解する必要があります。すなわち、私立学校法上定められている、理事会、理事長、理事、監事及び評議員会といった機関のそれぞれの特徴と責任を十分に理解することが重要です。特に監査機能を担う監事の特性については十分な留意が必要です。
 なお、文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する法人の公式的な見解ではないことを申し添えます。


1 学校法人におけるガバナンス

(1) 私立学校法における規定
 学校法人は、私立学校法に基づき設立された法人であり、私立学校の設置主体として公共的な性格を有するとともに、自主的・自立的な管理運営を行う上で、各学校法人の規模等に応じたガバナンスを構築する必要があります。学校法人のガバナンスを担う各機関の業務については、私立学校法上、次のように定められています。

2017/02/01

学校法人における不正会計 1

 今週から4回に分けて、学校法人における不正会計について解説していきます。最近、大企業において「粉飾決算」「不正会計」「不適切な会計処理」といった言葉が報道されることが多く、これが一般的な出来事になりつつあり、会計監査を仕事としている私たち公認会計士からするとよい風潮ではありません。もちろん不正会計が行われば、それを防止するための施策が企業内に組み込まれますが、また新たな手口で不正が行われます。

 大企業ばかりではなく、学校法人においても不正会計が報道されています。その多くは経費の不適切な支出や保護者等からの預り金を管理している周辺会計における不正です。今回のコラムでは、学校法人における不正会計の事例、特徴や対応策などを中心に解説していきます。なお、文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する法人の公式的な見解ではないことを申し添えます。