2017/08/30

学校法人の予算制度 2


 今回も前回に引き続き「学校法人の予算制度」について解説します。前回は学校法人における予算の必要性とその役割などについて解説しました。今回は作成すべき予算書の種類と提出時期及び予算編成の実務について解説します。
 なお、文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する法人の公式的な見解ではないことを申し添えます。


1 作成すべき予算書の種類と提出時期
 ⑴ 作成すべき予算書
 学校法人においては、予算については「理事長において、あらかじめ、評議員会の意見を聞かなければならない。」(私学法42条1項1号)とされ、また、経常的経費に関する補助金の交付を受ける学校法人は、収支予算書を所轄庁に届け出なければならないとされています(助成法14条2項)。


 ここでいう学校法人の収支予算書とは、「資金収支予算書」と「事業活動収支予算書」の二つを指します。資金収支及び事業活動収支の内訳表については、所轄庁に届け出るものに含まれていませんが、知事所轄学校法人の場合には、所轄都道府県が内訳表の予算書を添付するように指示している場合もあるので留意が必要です。なお、法令上、部門別収支予算(内訳表)の提出は必要ないとされているものの、学校法人が予算を策定するにあたっては、部門単位の収支の積上げ予算を策定することは必要です。一般的には、上記した二つの収支予算書の他、その内訳表として①資金収支予算内訳表、②人件費支出予算内訳表、③活動区分資金収支予算書、④事業活動収支予算内訳表が作成されるケースがあります。

 ⑵ 予算書の決議と提出時期
 予算については、前述したとおり「理事長において、あらかじめ、評議員会の意見を聞かなければならない」と定められています。なお、ここでいう「あらかじめ」の趣旨は、理事会で予算を決定する前に、評議員会に諮り、その意見を理事会に反映することにあるとされていますから、理事会の前に評議員会を開催する必要があります。
 そして、理事会の決議を経た当初予算を、前会計年度終了後3ヶ月以内に所轄庁に提出しなければなりません。また予算の補正があった場合には速やかに補正予算の届出をしなければなりません。



2 予算の種類
 ⑴ 本予算(当初予算)
 年度最初の予算のことで、会計年度開始前に作成されます。6月30日までに所轄庁に提出する予算は、原則としてこの本予算を指します。しかし、本予算は、年度開始前に作成されているため、入学者や在籍者数が十分に把握されていません。そこで実務上は、新年度に入り予算の進捗状況を見て、決算前の3月頃に第1回目の補正予算を編成し所轄庁への届出をしている例も多いようです。


 ⑵ 補正予算
 補正予算とは、当初予算に対して追加又は減額による変更をした予算です。予算の補正は、当初予算に対して1回の補正だけではなく、必要に応じて2回、3回と行われることがあります。補正予算の編成にあっては、本予算と同様に、評議員会の意見を聞いた上で、理事会の決議を要します。


3 予算編成の実務
 ⑴ 予算の編成
 予算の編成の方法には以下に挙げる3つの方法があります。理事長がトップダウンで包括的・独断的に決定する「割当型予算」、現場担当者の参加により組み上げる「参加型予算」、両者を組み合わせた「折衷型予算」です。
 「割当型予算」は、中長期的目標を策定する理事長が予算の策定を行うので、中期経営計画との整合が図りやすいというメリットがある反面、目標数値ありきで進みやすく、現場が認識している情報が汲み上げられず、達成不可能な予算が割り当てられてしまうおそれがあります。これに対して「参加型予算」は、現場担当者が予算策定に参加することで、モチベーションの向上につながるし、日頃、意識している業務改善のヒントなどを議論する場となりやすいです。ただし、あまり現場の自由に任せると、責任を回避する心理から、予算が確実に達成できる保守的な範囲にとどまり挑戦的な予算設定になりにくいのも事実です。両者の「折衷型予算」は、最終的な目標数値を理事長が示しながら、その具体的な達成方法や予算の割り振りを現場と共有します。このため予算の策定に時間は要しますが、仕上がれば理事長と現場が相互理解の上で策定した納得感の高い内容になります。私見としては、目標数値をトップが示し、その策定のプロセスで理事長と現場のコミュニケーションを内包している「折衷型予算」が、最良の策定方法であると考えます。ここでは、「折衷型予算」を前提に予算編成手続きの一例を示します。


 ① 予算編成方針の検討
 理事長他、常務理事、学長又は各学校長などが予算責任者を交えて、中期経営計画を策定した上で単年度予算を検討し、予算編成の基本方針を決めます。


② 予算編成方針の作成
 理事長他、担当常務理事、予算責任者は、前年度資料、本年度編成方針及び新規重要計画などを示し編成方針を明らかにします。新規重要計画とは例えば次のような項目です。
イ 人員構成の重要な変更
ロ 重要な施設設備投資計画
ハ 経常的支出の重要な追加支出
二 重要な収入の追加
ホ 長期にわたる経常支出の削減計画


③ 予算編成方針の決定
 上記項目について理事長(又は常務理事会)が決定します。


④ 予算編成方針の指示
 各部門に対し予算編成方針を指示します。配布資料として、前年度の実績と今後の影響を示す資料や新規重要計画の資金収支の資料があります。


⑤ 予算要求書の作成
 各部門から予算要求書を提出させます。


⑥ 部門予算案調整と総合予算案の作成
 各部門の収入予算要求書、支出予算要求書により予算の調整を行い、総合予算案を作成します。


⑦ 予算原案の報告
 予算原案について、理事長、常務理事に報告し事情説明を行います。その際には、理事長他、常務理事などの経営層が現場の意見を真摯に受け止め、目標数値を調整しなければならないケースが出てきます。目標達成に向けた具体的施策について双方が議論を交わすことが、予算を達成するために大切なプロセスであり、後々大きな意味を持つと考えます。


⑧ 予算案審議及び決定
 資金収支予算案と事業活動収支予算案については、各部門予算案について評議員会の意見を聞き理事会で決定します。なお、寄附行為により、評議員会が予算原案の議決機関となっている場合には評議員会の議決をもって決定します。
 以上の予算編成期間の例を示すと次のとおりです。なお、「予算規程」、「科目別予算見積要領」などを作成しておくことが必要です。


≪予算編成期間の例示≫



予算の区分

当初予算

補正予算

本部方針

10

 

方針の部門提示

11

 

予算原案の作成

11月~1月末日

20日間

原案提出

21

 

本部集計

1週間

1週間

予算折衝

2週間

10日間

修正原案提出

折衝後約7日以内

折衝後約7日以内

集計印刷

2月末~320

20日間

理事会・評議員会

3月末日まで

随時

所轄庁提出

6月末日

決定後速やかに


〔参照〕

学校法人会計のすべて第3版(税務経理協会)

                      (永和監査法人 公認会計士 津村 玲)
 

 

 

 

 

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